「すみません。出過ぎた真似を。
 多少は知ってるもので。」

 知ってるって知り合いって言っていいの?

 かしこまった敬語が丁寧で距離を感じるものの、彼は穏やかな雰囲気を纏っていた。

 立っていたのは伶央さんだった。

 仕事帰りのようでスーツ姿の彼はお店のソムリエなのかと思ってしまうくらいお店に馴染んでいた。
 眼鏡を外し髪型もバーテンダーの時と同じオールバックなのも、ソムリエに見える要因かもしれない。

「気を悪くなさらないでください。
 職業柄ですかね。
 肌を見てアルコールがダメなのが分かるんです。」

 肌を……見て。
 そっか、知ってるのはお酒について。

 大谷くんも驚いてようで彼に質問を投げた。

「肌で分かるんですか?」

「えぇ。まぁ。
 注射前のアルコール消毒でもダメでしょう?
 肌が赤くなるのでは?」

 私の方を向いて彼は優しく問いかけた。
 微笑んでくれる彼の目の奥が笑っていないのかどうかまでは分からない。

 ただ優しくて夢見心地で返事を返した。

「え、えぇ。はい。」

「そういう人は飲んでもつらいだけだ。」