『伶央くん。
莉緒を泣かしたら承知しないからね。』
お兄ちゃんの呼びかけにすぐ近くにいる伶央さんは反応して答えた。
「分かってます。」
「え……お兄ちゃん?」
『お盆休みに会えるのを楽しみにしてるよ。』
ツーッツーッ。と、兄との電話で聞いたことのない向こうが通話を切った音。
状況がつかめなくてジッと携帯を見つめた。
それを何度目になるか分からない伶央さんが同じように取り上げてテーブルへ置いた。
「尚之さんは莉緒が昔の郁みたいになって欲しくないだけさ。」
「昔の……郁さん?」
郁さんは寂しさから男の人と肌を重ねるような荒れた時期があったっていう、そのこと?
「まさか。そんな風に、私が?」
目を丸くするとおでこをゴチンッと軽く頭突きされた。
「イテテ……。」
呑気な私は寂しそうな顔をする伶央さんにこの時やっと気がついて息を飲んだ。
「俺はその程度なんだな。」
立ち上がった伶央さんは自室に歩いて行ってしまった。
傷ついたような寂しい顔が頭から離れなくて伸ばした手は空をつかんだ。
莉緒を泣かしたら承知しないからね。』
お兄ちゃんの呼びかけにすぐ近くにいる伶央さんは反応して答えた。
「分かってます。」
「え……お兄ちゃん?」
『お盆休みに会えるのを楽しみにしてるよ。』
ツーッツーッ。と、兄との電話で聞いたことのない向こうが通話を切った音。
状況がつかめなくてジッと携帯を見つめた。
それを何度目になるか分からない伶央さんが同じように取り上げてテーブルへ置いた。
「尚之さんは莉緒が昔の郁みたいになって欲しくないだけさ。」
「昔の……郁さん?」
郁さんは寂しさから男の人と肌を重ねるような荒れた時期があったっていう、そのこと?
「まさか。そんな風に、私が?」
目を丸くするとおでこをゴチンッと軽く頭突きされた。
「イテテ……。」
呑気な私は寂しそうな顔をする伶央さんにこの時やっと気がついて息を飲んだ。
「俺はその程度なんだな。」
立ち上がった伶央さんは自室に歩いて行ってしまった。
傷ついたような寂しい顔が頭から離れなくて伸ばした手は空をつかんだ。

