ほら。今だろ。

　ここで、お前なんか遊びに決まってる。
　勘違いするなって。
　昨日の女が妹のわけないだろって言えば済む話だ。

　同じ目に遭わせてやるんだって心に決めていた。
　アイツの大事な妹を奪ってボロ雑巾のようにして捨ててやるって。

　なのに………。

「伶央さん？」

「あ？」

「あの……向こう向いててもらえません？」

「なんで。」

「いいから！」

　渋々顔を向こうに向かせると軽い衝撃があって頬にキスしたらしかった。

　こいつ……。

「こんなのただぶつかっただけだろ。
　やり直し。」

「だ、で、もういいんです。」

　拗ねたような莉緒の手を取って意地悪を言う。

「ダーメ。
　ほら。勢いつけないでゆっくり。」

　甘い声で囁けば赤い顔をした莉緒がゆっくり唇を俺の頬に重ねた。
　柔らかな感触が頬に着地する。

　我慢できなくて離れていく唇に自分の唇を重ねた。

「もう」と文句を言う莉緒が愛おしくて自分から手放すなんて到底無理だった。

　俺がどんな奴でも側にいてくれる？

　そんなことを囁いてしまいそうだ。
　莉緒に自分の裏側を見せたくない。
　そんな気持ちにさえなっていた。

　けれど………。