「晩飯はいらない。
　遅くなる前には帰るから。
　ちゃんとマンションで待ってろよ。」

「はい。その件は……。はい。」

「もう少し苛めてやりたいが……。
　まぁいい。おとなしく帰れよ？」

「はい。ご確認よろしくお願い致します。」

「フッ。あぁ。分かった。
　山本さんに代わってくれる？
　仕事もしなきゃな。」

「はい。山本ですね？
　お待ち下さい。」

　保留を押して山本さんを確認すると席で仕事をしていた。

「山本さん。
　外線１番にジェニアル社の黒田様です。」

「はーい。ありがとう。」

　受話器を置いて山本さんが取ったことを確認すると周りにバレないように休憩室に逃げ込んだ。
　顔が熱くて手で扇いでも追いつかない。

　ジェニアル社の黒田さん。
　電話を取って気が付いた。

　声が色っぽいって課内で話題になっていたし、私も電話を取れた時はドキドキしていた相手だ。

　それが伶央さんだったなんて。

　だいたい、わざわざ会社の電話で伝えてくる辺り伶央さんは意地悪だ。
　メールでもなんでもいいのに。