「ちょ、大谷くん？」

　追い詰められて逃げ場がない。
　腕をつかまれて振り払おうとしても男の人の力に敵うはずもなく振り払えない。

　押さえ込まれて無理矢理、唇を重ねられた。

　恐怖を感じて声も出ない。
　足が震えて再び迫ってくる大谷くんに為す術もなく………。

「おい！何してる！！」

　ドスの効いた声に大谷くんがビクリと肩を揺らした。
　その隙をついて私の体は声を掛けた人の腕の中に収まった。

「出るとこ出たくなかったら、さっさと失せろ。」

　怯んだ大谷くんはそのまま逃げるように去って行った。

　助けてくれた人の腕の中で体はカタカタと震えたまま。


「お店に行きませんか？
　温かい飲み物でも飲みましょう。」

　いつもの優しい口調に戻ったマスターが優しく声を掛けてくれた。
　助けてくれたのはマスターだった。

　いつもは温和なマスターだけど、やっぱり男の人だ。
　女の私では……あんな、到底太刀打ちできなくて………。

「お嬢さん？お店まで歩けますか？」

　お店……そこには伶央さんもいて、そして………。

　マスターから体を離すと頭を下げた。