貸してくれた服を上から被るとなんとか胸元を隠すことが出来た。

 口の悪い、いい人なのか、悪い奴も逃げるような極悪非道な人なのか。
 クレイジーなのがお店の名前で少しだけホッとした。

 お店の方に顔を出すと、さきほど優しく声をかけてくれた年配の人の方と目が合って微笑まれた。
 ロマンスグレーの男性は口髭をたくわえたダンディな佇まい。

「マスターに頼んでやる」のマスターはこの人のことだろう。

 お店は雰囲気のあるバー。
 カウンターの奥の壁にはたくさんのアルコールが並ぶ。

 おいとましようかとお礼を言う前にカウンターにコトリとカップが置かれた。

「ホットアップルジンジャーです。
 ノンアルコールで作りました。
 爽やかで体の芯が温まりますよ。
 夏でもクーラーで体は冷えてますから。」

「ありがとうございます……。」

 お礼は出してくれた飲み物へのお礼へと変わり、お言葉に甘えてカップの置かれたカウンターに座った。