昼休み。机の上に置かれた、やたら存在感のあるスープジャーとにらめっこしていた。

 絶対食べてねと言われた手前、いつもみたいにどこかに逃げることもできない。もう、ひとりぼっちのごはんでもいいやと腹をくくって、スープジャーに手を伸ばす。

 なぜか二段に分かれている。不審に思いつつも蓋を開けると、濃厚なスパイスの香りが周り中に広がった。

 この、インドを感じさせるスパイシーなターメリック色のスープ。トッピングしてある揚げ野菜。そして下の段に入っていた白いご飯……。


 これ、カレー風味のスープじゃなくて、スープカレーじゃん!!


 私は心の中で、百瀬先輩に思いっきりハリセンでツッコミを入れていた。

 カレーの匂いというのは、どうしてこうも強烈に鼻をくすぐるのだろう。まわりの席の子たちが、目を丸くしてこちらを見てくる。

 私がいたたまれなくなって顔を赤くすると、

「それ、朝三年の先輩が渡してたお弁当だよね? わあ、すごくおいしそう! これってカレー?」

 以前声をかけてくれた気さくな子が、興味津々と言った顔で近寄ってくる。

「あっ、たぶんスープカレーだと思う……。あの、ごめんね、カレーの匂いすごくて……」

 私が身を縮めながら答えると、その子もまわりもほっとした笑顔になった。

「そんなの、気にしなくていいのに~! 私、スープカレーって食べたことないんだ。良かったら一緒にお弁当食べようよ! 味見させて欲しいな。……あっ、えっと、迷惑じゃなかったらだけど……」

 最後の言葉だけ遠慮がちに言ったその子を見て、私は気付いた。

 どうして自分だけが被害者だと思っていたんだろう? 今まで声をかけてくれた子たちだって、勇気を出して話しかけてくれたんだ。自分だけがこわくて、他の人は当たり前にできているんだと思っていた。そうじゃないんだ。それなのに、私は――。