この恋は少しずつしか進まない




私も辰己さんに気持ちが残っていると思ってた。

だから再会した時にもっと嬉しい気持ちになると思ってたのにそうじゃなくて。

辰己さんに私と別れたことを後悔してると言われた時も、もっと心が高鳴ると思ってたのに、そうならなかった。

そんな自分に一番驚いているのは私自身。


「今さらなんだよって感じでムカつく?」

「ムカつくとかは全然……」

「じゃあ、伊織はなにに悩んでるの?」


たしかに私はなにを悩んでるのかな。

辰己さんと付き合えばまた楽しい日々が待っている。私が恋い焦がれ続けた人と幸せな毎日を送ることができる。でも……。


「自分がどんな人と合うかようやく気づいた?」

「え?」

「背伸びするだけの恋愛なんて長続きしないよ。伊織は伊織のままで、笑っていられる相手がいるはずだよ。そういう人と恋をしたいって気づいたから返事ができずにいるんじゃない?」
 

美伽にはやっぱり色々と見透かされてしまう。


辰己さんの魅力は変わってなかったし、会話をしながら胸を何度も締め付けられたけど、あれは恋をしてるドキドキじゃなかった。

あんなにも想い続けていた辰己さんにどうして心臓が高鳴らなかったのか。

その理由にも、私は気づきはじめている。