「うわ、な、なに?」
思わず手に持っていたおたまを吹っ飛ばしてしまいそうになってしまった。
「……そんなに近くで待たれてもまだできないよ」
「じゃなくて、なんか顔色悪くないですか?」
そう言って、加島は確かめるように私のおでこに触れる。
辰己さんとは違う加島の手の感触に、ドキッとまたおかしな心臓のスイッチが入る。
……加島にドキドキするなんて、ありえない。
そう思ってもこの胸の鼓動は本物だ。
「うーん。熱はないですね」
「な、ないよ。っていうかなんなの、その服は」
私が誤魔化すように加島のTシャツを見た。
今朝、家を出た時には白黒のボーダーを着ていたのに、今はわんぱく少年かってぐらい土埃で汚れている。
「遊んでたらこうなりました」
「草原で犬みたいに走り回ってたの?」
「似たようなもんです」
ちょっとどんな遊びをしてたのか気になるけど、ケガなく帰ってきたなら、まあ、いいか。
「コップと箸まだですよね?準備しますね」
加島は晩ごはんが待ちきれないって感じでリビングに向かっていく。
……さっきまで、あんなに色々なことを考えていたのに加島と話していたら、自然と安心している自分がいた。



