この恋は少しずつしか進まない




そのあと辰己さんは返事はゆっくりでいいと言ってくれて、私たちは喫茶店を出た。


ひとりになった帰り道。私はなにが起きたのか整理できずにいた。

とりあえず行くはずだったスーパーに寄って買い物をして家に帰り、約束していたシチューをお鍋で作っている今も足元がふわふわとした感覚になっている。


私も辰己さんのことが忘れられなかった。

それは私の一方的な想いだと思ってた。でも、辰己さんも同じ気持ちだったなんて……。

と、その時。ガチャリと玄関のドアが開いた。


「先輩、ただいま」

それは息を切らせて帰ってきた加島だった。


「うわ、いい匂いですね!俺お腹ペコペコです」

加島の顔は見慣れてるはずなのに、今は何故だかあまり目を見ることができない。


「お、おかえり。ごめん、まだできてないけど」
   
「大丈夫っすよ。匂いだけで待てます」


加島は洗面所へと向かい、手を洗ってる音がキッチンにまで響いていた。

私はコーン入りのシチューをおたまでグルグルと回しながら、辰己さんとのやり取りを何度も頭の中で繰り返す。


本当に信じられない。辰己さんが離れている間も私のことを……。


「先輩」

名前を呼ばれて振り向くと、私の背中に張り付くように加島が立っていた。