「彼氏は出来た?」
その質問にカランッと、アイスティーの氷が崩れる。
本当に、普通に、先ほどの学校は楽しい?という声のトーンで、聞かれた。
「いないです」と、答えながらも、そんなことをわざわざ聞く必要があるのかなって。
仮にも付き合ってた間柄だし、私は『彼女いるんですか?』なんて、辰己さんには絶対聞けない。
それでも、左手に指輪はないことに安心して。この一年で結婚していてもおかしくない年齢だから、私のあとに付き合った人と幸せにやっているんじゃないかと、心の中で考えたりしてた。
そうやって私は辰己さんのことを切り離すことなんてできなかったのに、辰己さんはきっと私がそんな想いでいたことなんて夢にも思ってない。
辰己さんを縛る権利なんてないというのに、そんなことで寂しく感じてしまう私はやっぱり幼い。
「ずっと心配だったんだ、伊織のこと」
次にカタッと、コーヒーカップを置いたのは辰己さんだった。



