この恋は少しずつしか進まない





その日の夜。リビングでは白だしスープのいい匂いが漂っていた。



「やっぱり私が目利きしたカニは正しかった!」


身がたくさん詰まっているカニにお姉ちゃんは得意気な表情を浮かべて、傍には空の缶ビールがすでに3本。

4本目のプルタブを迷うことなくプシュッと開けて、お姉ちゃんは喉を鳴らすようにしてビールを飲んだ。



「あんまり飲みすぎないでよ」

「平気、平気。夜はこれからだから」


テーブルの中央にはガスコンロが置かれていて、鍋の中身は煮たっているスープだけ。

実はすでに最初の鍋を食べ終わってしまい、加島が追加のカニと野菜をキッチンで準備してくれている。


「加島くんの料理、本当に美味しいね」

お姉ちゃんのお酒のペースが早いのはこのせいだと思う。


鍋の後には卵を溶いて雑炊にすると言ってるし、お姉ちゃんのリクエストに応えてパクチーの生春巻きまで作ってくれた。

パクチーは苦手だったはずなのに、後を引くソースのおかげか私までぺろりと食べられてしまった。


「美味しいからつい食べすぎちゃって体重増えぎみだけどね」

乙女ちっくに体重計に毎日乗る習慣はなかったはずなのに、美伽に顔が丸くなったと言われてから気にするようにはしている。