この恋は少しずつしか進まない




「加島!」

「……ぐはっ」

二度寝しようと布団にくるまっていた加島にダイブした。


「大変、一大事」

「俺のあばら骨のほうが一大事ですよ……」と、思いのほかクリーンヒットしてしまった私の膝に加島は顔をしかめていた。


「お姉ちゃんが帰ってきたの」

「え?」

「まだなんの説明もしてないし、こんな場面見られたら誤解されちゃう。とりあえずベランダに身を潜めてて」

そう言って私は目に入るところにある加島の荷物を押し付ける。


「え、裸足っすよ」

「足だけあとで洗えばいいから」

「俺のスマホ充電しっぱなしでそこに繋いだままです」

「もう、どこ!?」と、振り向くと……。


「見ちゃった」

お姉ちゃんが不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「へえ、伊織も男連れ込んだりするんだ」 

「ち、違う」

そう否定しても、加島に荷物を持たせて存在を一時的にでも隠そうとしたことは事実。


加島がいつまでうちにいるか明確じゃなかったし、お姉ちゃんは男女関係のことになると過敏に楽しむ癖があるから、加島を家に置いていることはなるべく秘密にしておきたかった。