この恋は少しずつしか進まない




「どうしたじゃないよ。どこにいるか聞いてるの」


私の足は校門の前で止まっていた。

右か、左か、それとも真っ直ぐか。加島が行きそうなところなんて予想もつかないから動くことができない。



『教えません』

雨が降る前に、と焦っている私に届く加島の言葉。「なに言ってんの?早く――」と急かそうとする私の声に加島は被せてきた。


『水沢先輩は面倒見がいいから教えたら来ちゃうでしょ』

「………」

『来たら俺、また甘えて頼りますよ』

まるで脅すような言い方。


『だから来なくていいです。俺を突き放したままでいてください』


……なにそれ。


私も中途半端だけど、加島も中途半端。


図々しくシャワーを浴びたり、冷蔵庫を開けたり、勝手なことばっかりして人のお説教だってロクに聞かないくせに、こんな時にだけ良い子ぶるなんてズルい。


……と、その時。加島と繋がる電話からメロディーが聞こえてきた。

これは中央公園にある時刻を知らせる時計塔の音。



「……っ、そこから一歩でも動いたら許さないからね!」

私は電話を切って、勢いよく走り出した。