この恋は少しずつしか進まない




やっぱりプリンに釣られたとはいえ、加島を泊めたのは失敗だったよね。

懐かれないように一線は引いたつもりだったけど、中途半端なことをしちゃったなと反省してる。


「それで?加島は今日どこに泊まるの?」

美伽がカフェオレを飲みながら聞く。


「ああ、寝床ならもう決まりました」

私の心配をよそに加島はケロッとした表情で答えた。


……なんだ。やっぱり私以外にも頼れる人がいたんじゃん。

あんなにすがるように頼んできたくせに。


「加島ー。美術の先生呼んでるぞ!」

中庭と校舎を繋ぐ渡り廊下で加島の友達が叫んでいた。


「じゃあ、俺行きますね」と、加島は私たちから離れていく。その後ろ姿を見つめながら、やっぱりどこかモヤモヤしている自分がいた。


「ちょっと寂しいんじゃないの?」 

私の心を読むように美伽がクスリとしている。


「全然!むしろしつこくされなくてラッキーって感じだよ」

私はひとつひとつ味わって食べようとしていたお弁当のおかずをやけ食いのように素早く完食した。


私が寂しく思うはずがない。だって一晩だけと突き放したのは自分だし、加島とは波長が合わないと昨日染々と実感したはず。

だから決して寂しくてモヤモヤしてるわけじゃない。


ただあいつが……。

あまりに素っ気なく行ってしまうからやっぱり私に頼ったのは気まぐれだったんだなとムカついてるだけだ。