この恋は少しずつしか進まない








「――だからね。そんなに落ち込むことはないと思うよ。意地張ってたって仕方ないんだからごめんねって素直に言えばすぐに仲直りできるよ」


「……うう、水沢先輩」


昼休み。私は後輩の女の子の相談に乗っていた。

もっぱら女子が悩んでいるのは恋愛のことが多くて、この子もまた彼氏と喧嘩してしまったらしい。


「ありがとうございます。先輩に話したらスッキリしました」


私は特に大きなアドバイスをしてるわけじゃないけど、私になら話せるという子も多くて相談は途切れることはない。


「それにしても先輩がピンをしてるなんて珍しいですね」

女の子が私の前髪を指さす。「知的って感じで大人っぽいです」と、女の子は笑って校舎の中へと入っていった。


「単純に寝癖を隠してるだけなのにね」

ずっと隣にいた美伽がぼそりと言った。


今日も私は美伽と中庭に来ていて、身だしなみは私と違っていつも完璧。

このピンを貸してくれたのも美伽で、『そんな前髪で学校に来ちゃダメ』と朝から叱られたのは言うまでもない。