「アンタはおばさんだし、特別に美人ってわけじゃない。……でも直人がアンタの傍にいたがる理由はなんとなく分かる気がする」
「……え?」
い、今、なんて言った?
聞き間違いかと思って、私は全神経を集中させて理沙ちゃんの声に耳を傾ける。
「私、直人にはっきり言われたの。理沙のことは今も妹みたいに思ってるけど、それは恋愛対象じゃなかったって」
「……嘘。私はてっきり話し合ってヨリを戻したんだと……」
「思えば私は直人がしてほしいことも、その気持ちも聞いたことはなかった。そういうところがダメだったって、まだ認めたくないけど、はっきり恋愛対象じゃなかったなんて言われたらどうしようもない」
「……理沙ちゃん」
理沙ちゃんがどれだけ加島のことを好きだったか私は知ってる。
少しのことでも嫉妬して、加島のことを独り占めしたいという気持ちが私には理解できなかったけど、今なら少しだけ分かる。
「言っとくけど、私は落ち込んでないからね。私は可愛いし、モテるし、その気になればいくらでも直人以上の彼氏ができるんだから!」
そう言って、理沙ちゃんはベンチから腰を上げた。
強気のまま歩き去っていく彼女は、ふたつも年下の女の子だけど、なんだかカッコいいとさえ思った。
「わ、私も……!私も理沙ちゃんは可愛いと思う!ちょっと短気なところもあるけど、素直でいい子だと思ってるよ!!」
これからのことなんて分からないけれど、いつか私の恋の相談をして、理沙ちゃんの相談にも乗ったりして。
理沙ちゃんとはそんな関係になれたらいいなと思ってる。
「そういうお人好しなところも、おばさんなのよ。じゃあね」
最後もやっぱり憎まれ口だったけど、その顔は悔しそうに、嬉しそうに、笑ってくれていたような気がした。



