「はい、います」
ここで泣くのはズルいと、涙を堪えた。
「なんとなくそうなんじゃないかなって気づいてた」
辰巳さんはそう言って眉を下げる。
「一年ぶりに伊織と再会して、なんか雰囲気が変わったなって思ってたんだ。うまく言えないんだけど、心の拠り所があるような、伊織が自然体でいられるような、そんな人が近くにいるのかなって」
「……辰巳さん」
「本当はたくさん無理してただろ?アイスコーヒーも苦手なのに」
私の背伸びを辰巳さんは知っていた。
知っていて、私のために気づかないふりをしてくれていた。
「俺は等身大の伊織の姿を見たかったよ。そういう関係になれなかったのは悔しいけど、次の恋愛では背伸びをしないでちゃんと素直になるんだぞ」
「……っ、はい」
辰巳さんの優しさに堪えていた涙を拭く。
辰巳さんと出逢って、楽しいことも幸せなことも数えきれないほどあった。
本当に感謝してる。言葉にならないくらい。
辰巳さんは最後まで私の憧れで、こんな人になりたいと思うような、とても素敵な人だった。



