この恋は少しずつしか進まない




『いいよ。うちに来ても』

加島と住むことを受け入れた時も。
 

『いいもんですね。やってもらうのも』

タオルで髪を拭いてあげた時も。


『私、アンタといると楽しいよ』

星空の下で本音を言った時も。


『先輩だけですよ、俺を甘やかしてくれるのは』

そんな言葉で胸がきゅんとした時も。


『別に隠さなくてもよかったのに』

加島にだけは知られたくないと思ってしまった時も。


全部、ぜんぶ、加島のことが大切だったから。

特別だったから。

ただの後輩としてじゃない。

頭よりも先に心が動いた瞬間は、いくつもあった。



「好きな人、いるんでしょ?」

辰巳さんは確認するようにもう一度聞いてきた。