この恋は少しずつしか進まない




私にはとても苦く感じるアイスコーヒーを飲みながら、頭の中で加島のことばかりを考える。


今頃、理沙ちゃんと一緒にいるんだろうか。

きっと加島は自分の家に戻るつもりだ。だからこそ理沙ちゃんと話し合うことを決めたのだと思う。

私もそれを望んでいたはずだったし、加島との同居に前向きではなかったはずなのに……。


加島が家に戻ったら、今までみたいに一緒に買い物に行ったり、ご飯を作ってもらったり、脱ぎっぱなしの加島の派手なTシャツを畳むこともなくなるんだろうなと考えては寂しくなってる。


いつの間にか、こんなにも加島の存在が大きくなっていたということに、私は初めて気づいた。



「なんか上の空だね」

運転席に座っている辰巳さんがじっと私のことを見ていた。


「え、あ、ごめんなさい」

「それと、伊織は謝ってばっかり」

「ごめんなさい、あ……」

私はアイスコーヒーをぎゅっとする。


辰巳さんといるのに、心は加島に向いている。そんな私の気持ちなんて、大人の辰巳さんなら見透かすことは容易い。



「もしかして、今、好きな人でもいるの?」

私はずっと加島への気持ちは認めたくないという変な意地があった。

でも……。