この恋は少しずつしか進まない




自分が人気者だって自覚してるのに、なんでこうも周りの反応をサーチする能力は低いのか。

私は変な噂を立てられないように、加島を廊下へと引っ張った。


「俺、見たいDVDがあるんですよ。調べたら今日からレンタル開始されるみたいなんで一緒にレンタル屋に寄ってから帰らないかなって」

加島が憎らしいくらい可愛い笑顔を向けてくる。


たぶん加島が借りたいDVDは私も見たいSFもののやつ。

テレビのCMで流れた時に『絶対に見る!』と宣言してたし、加島とは合わないことだらけだけどドラマや映画の趣味だけはばっちりとシンクロする。

私も見たい、けど……。


「えっと、ご、ごめん。今日用事があってさ!」

語尾を強調したら思いのほか声が大きくなってしまった。


「なんの用事ですか?」

「み、美伽と遊ぶ約束してるの」


ごめん、美伽。つい嘘をつく口実に使ってしまった。

あとで謝る。あとジュースも奢る。でもそのぐらい必死で噂をついてる自分がいた。



「だから加島は先に帰ってて」

瞳は泳ぎまくってたし、おそらく加島は変に思ってた。

でも深く追及してくることもなく「じゃあ、今日の晩めしは俺が作っておきますね」と、優しく言って昇降口があるほうへと歩いていった。


ああ、なんか心苦しい気分になってくる。


普通に辰巳さんのことを話せばよかったじゃん。

元カレと会うことなんて珍しいことでもないし、加島に遠慮する必要もない。

でも、だって。加島には辰巳さんと会うことを知られたくないって、強く思ってしまった。