この恋は少しずつしか進まない




「さっきの友達?」

私の姿を確認できたということは当然、隣にいた加島も見えていたわけで。


「……はい。友達です」

無意識に返答に間が空(あ)いてしまった。


そんな私を見て辰己さんがどう思ったかは分からないけど、じっと射るように見つめられると目がうまく合わせられない。



「ねえ、今日の夕方、映画見にいかない?」

「え?」

「今日は仕事が早く終わる予定だから、学校に迎えにいくよ」


辰己さんは今までデートなどはすべてリードしてくれたけど、ちゃんと私の気持ちを優先してくれる人だったから、こんな風に当日に約束をしてくることはなかった。

すると、私の心を読んだみたいに辰己さんが「急でごめんね」と謝った。


「ずっと会いたい気持ちを押さえてたからか、伊織とこうしてまた喋れてるのも嬉しくて」

「……辰己さん」

「また連絡するから約束忘れないでね」


私の返事を待たずに辰己さんは車を走らせて仕事へと行ってしまった。