この恋は少しずつしか進まない




「ヒトデウインナーは最後に食べますね」

「いいよ。一番最初で」

なんて、会話をしていると……。ププッという車のクラクションが反対斜線の道路から聞こえた。


なんだろうと、視線を向けるとそこには路肩に停車している黒い車。

運転席の窓が開いてそこから見えた人物は――辰己さんだった。


ドキッと無条件に心臓がうるさくなる。

なんでここに?

そんな疑問を抱いても辰己さんとはばっちりと目が合っていて、気づかずに通りすぎることはできない。


「か、加島。ごめん。先に行ってて」

「知り合いですか?」

「……うん。だからお願い」

「分かりました」


加島の背中を見送ったあと、私は辰己さんの元へと駆け寄った。


「ビックリした?」

「は、はい。どうしたんですか……?」

辰己さんはスーツ姿で、おそらくこれから会社に出勤するのだろう。


「今日、仕事の打ち合わせがこの近くであって。車走らせてたら伊織の姿が見えたからつい」


偶然とはいえ、さっきは本当に心臓が飛び出るほど驚いた。

……加島にはなんの説明もしなかったけど、深く聞かれることもなく先に行ってくれてよかった……。