「秋声(しゅうせい)さん!いますか?」
「ん?野菊(のぎく)。どうしたんだい?珍しい。」
「これ、拾いました。」
「うわっ!」
手を引かれて秋声さんとやらのまえに出される。
うわぁ。すごくお顔がお綺麗……
美人って、こういう人のことを言うんだろうな…
「えっ。拾ったって野菊…この子どうしたの?」
「さぁ。見回りしてたら河原に1人で座ってたんで連れてきました。今日こいつ泊めてもいいですか?」
「え!?」
ちょっと待ってだいぶ意味がわからない。
まずここどこ?
そして泊めるって何!?
「それは別に構わないけど…
君、どうしてこんな時間に1人でいたんだい?家は?家族は?」
「え!?
えっと…」
「家なしか?」
「こら野菊。物騒な事言わない。」
「そ、それが、私にもわからなくて…」
「「は?」」
まぁ、当然そうなるだろう。
というかこんな時間って言ってもまだ多分7時くらいなのに、なにをそんなに…
「わ、わからないって?」
「それが、気づいたらここにいて…
でもここに見覚えがある訳でもないしどうやってここに来たのかも分からないしで、私も混乱してるんです…」
「なんだ、よそ者か。じゃあお前ヨミのことも知らないのか?」
「よ、よみ?」
「君、自分の名前は分かる?」
「え、えっと、…えっ、と…」
あれ?
なんだっけ。私の名前。
なんだろう。頭の中がぼやぼやしてて思い出せない。
「ご、ごめんなさい…思い出せないです…」
「そっか。じゃあ今まで住んでたところは?」
「あ、それは覚えてます!
静岡県ってところです!」
「静岡県?ってどこですか?秋声さん、」
「さぁ。僕も聞いたことないところだな…
結構遠いところなのかな?」

