そこからはあまり覚えていない。

パニックになりすぎて何も考えられなくなったため、とりあえずただひたすら歩いていた。

気がつくと川辺に座って夕日を眺めていた。


「…綺麗」

どうやら夕日が綺麗なのは全国共通らしい。

周りの人が日本語を喋っているからここが日本なのは間違いないのだが、ここが日本のどこなのかはまったく検討がつかない。

少なくても私の知ってる土地に和服で歩いたり町中全部木造だったり道を馬で歩いたりする文化はなかったはずだ。


てか、見れば見るほど江戸っぽい。

なんか、"昔!"って感じ。

飛行機も電車も車もバイクも自転車だってどこにも見あたらない。

コンクリート造りの家や建物もどこにもない。

どうなってんだ?この街。



「はぁ…」

気づけば日は暮れ、辺りも薄暗くなってきた。


「おい、そこの!」

「へ?」


声をかけてきたのは今の私と同じ年くらいの顔の整った男の子だった。



「こんな時間にこんな所で何をしている!喰われるぞ!」

「は?くわれるって…」

「いいから来い!」

「ちょっ!」


男の子は私の手を取って走り出した。

つぎは何事?
喰われるって何?

もー、ただでさえ今の状況を整理するのに手一杯なのに、これ以上疑問を増やさないで欲しい。


そうこうしているうちに着いたのは"涼風凛"と看板の付いたお店?…にしては広いけど。

とりあえず見どこかに着いた。