そこから、私にとっては『預かっている』形の黎。


正直、この国に吸血鬼というのは希少なので、手元に置いて観察出来るのはなかなかない機会だ。


黎は吸血鬼と言っても日本の鬼と異国の吸血鬼の混血なので、色々と先例から外れることがある。


例えば、食事が極端に少なくてよかったりする。


怪しまれないように、普通の人間と同じ食事もさせている。


が、それで満腹、ということはないようだ。


やはり主食は血だが、三日程度に一度、二、三滴ほども飲めばよい。


血を与えているのは、私の孫の澪だ。


澪は正統小埜家の血筋であるが、陰陽師としての力はない。


だから、澪を給仕(きゅうじ)にあてた。


……まあ、黎は毎回、不味い、もう飲みたくない、こいつの血は黒い――などと気に召さないようだが――だからこそ良かった。


好む血であれば、喰らいつくすが性(さが)の吸血鬼。