暗い林道に倒れ伏したわたし。
 

背中を斬りつけられ、血が流れ出ている。
 

喋ることも、瞬くことも出来ないほど意識に霞がかかっている。
 

――月を背にした彼が現れるまでは。


「……ほしい……の…?」
 

あれ、音が出る。しゃべってる?


「そー。マズい血、飲まされてるから。あんたからいいにおいするし、美味そうだし」
 

そう言って、その人はわたしの脇に膝をつき、首元に触れた。


手……冷たい。


「なあ、いい?」


「……いい、よ……わたし、を、しなせて……くれるなら………」


「ちゃんと送るよ。一度きりの餌にはしねえ。じゃあ――」
 

その人は、わたしの頭に手を添えて少しだけ持ち上げた。


「いただきます」
 

牙――が、首に突き刺さった。