思わず声を出してしまった。 すれ違った人がいた。 「れ」 背中しか見えない。でも、 追いかけた。 「………いな、い……?」 その先には誰もいない。 「ま……そだよね……」 こんな偶然で都合よく逢えるわけがない。 そんな物語の中を生きてはいない。 そこに大すきな人がいるなんて。 妄想が見せた幻だろう。 ………。 どこにいるの? 淋しく、そう思う。