「はー……」


時間を稼ぐためと、同じ階にいては海雨に見つかってしまうと思ったので、わざわざ売店のある一階まで降りた。はー……困った。


海雨の分もお水買っていこ。


海雨は過度の糖度やカフェインの摂取が制限されているので、ミネラルウォーターを選ぶ。


自分も同じもの手にして、会計を済ませた。けど、海雨も普通の女子なんだよねぇ。


恋バナ大すきか。


でも、まさか黎のことは何と説明していいのだろうか。助けられた、だけなら言えるけど……。


海雨のことだから、いつ、どこでどんな状況で――と話を掘り下げてくるだろう。


そうしたら言える言葉がない。


もう逢えない人なのだと。


どこにいるかも知らない人なのだと。


「え」