「……うん。怪我はしてないよ」


「……真紅?」


私のヘンにに落ち着いた表情と声に、海雨は不安げな声を出した。


「真紅……すきな人でも出来た?」


「……うえっ⁉」
 

いきなり核心を衝かれて、それまでの平静が消えた。海雨は俄然ノリノリだ。


「ねえっ、そうだよねっ? 真紅恋してるよねっ? 誰? あたし知ってる人? もしかして桜城くん? だからあんなこと訊いてきたの?」


矢継ぎ早な質問に、顔が火照るのばかりを感じる。海雨の目は鋭い。


たった今気づいた自分の心は、もう親友に見透かされている。


「~~っ、わ、私飲物買ってくる!」


「あっ! 逃げるなー!」


逃げさせてくれー!


心の中で叫んで、海雨の病室を飛び出した。