「なにそれ! 交際ゼロ日婚ってやつっ?」

「あ、いやすぐに結婚するわけじゃないよ? 影小路に入ってやることとか、決めることとかたくさんあって、それが片ついたらって言われてるから……」

「で、でも、プロポーズされてるよね? それ」

海雨はかぶりつきの勢いで私の腕を摑む。

「真紅が自分の道を見つけたら、ってくらいかな」

「黎⁉」

「ごめん、真紅。真紅のとこに行くって言うのを、黒藤と月御門だけじゃ抑えきれなくて、結局俺が案内を……」

「真紅の親友に挨拶することの何が悪いというのっ」

扉を開けた黎を押し退けて入って来たのは、叔母(しゅくぼ)だった。ついでに黎が叱責されている。