陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】


甦って来た記憶の中に、月の色をした女性の口が、そう動いていた。

私の唇も同じように動く。

それを聞いた白ちゃんははっと息を呑み、黒藤さんは片目をすがめた。

私は片手を、黎の方へ伸ばす。この言葉は、あなたのため。

「かの、ものより、きしょうをとりはらいたまえ」

思考より先に口をついて出る音の意味を、遅れて頭が理解する。

どこかで聞いたような言葉。身体の奥底で紡いだことのある言霊。


 謹製し奉る
 彼の者より鬼性を取り祓い給へ


「急々如律令――」

きゅうきゅうじょりつりょう――今すぐそうせよという、意味の言霊。

私の言霊は、空気を一変させた。

漂っていた鬼性――黎から掃き出された妖力の残滓が、ことごとく浄化されていく。

そして黎は私を抱き寄せて深く息を吐いた。

その吐息が、最後だった。