「病院?」

「黒ちゃん? 紅緒がどうかしたの?」

黒藤さんは先に歩き出してしまう。

私たちは戸惑って顔を見合わせたあと、すぐに追うことにした。

「今、水鏡の向こうで母上が目を覚まそうとしている」

玄関まで来ると、黒藤さんがいきなりそう言った。

「目を覚ますって……それは明日じゃないの?」

戸惑いを隠せないママに、黒藤さんは肯いた。

「母上の算段では、そうでした。ですが、それを決断された当時の母上は、無涯を失い傷心でもあられた。どこかに隙があったのかもしれない。……母上の予定とは、時間がずれたようです」