――……血?

口を押さえた手が、まだらに紅く染まっている。

咳込みは続く。

手では押さえきれなくなって、一際大きく咳込んだとき、床にまで飛び散るほどの血がこぼれた。

血が焼かれていく。もしかして今、真紅の血が覚醒されたのだろうか。

「……は……」
 
思わず苦笑がもれる。

短い時間でさえ、あの子の傍は許されなかったのか。

桜城の家とは縁切りして、退鬼されるまでの少しの時間でも傍にいられたらと願った。

真紅に出逢えたことだけでも幸福だと思って、死ぬことに諦めるつもりだった。

だが、そうするなと本人が厳しく言って来た。