「俺の父の名だ。今はいない。母上はよく、永遠(とわ)の恋人だと言っていた」

「………」

永遠の恋人。

「……映ったな。真紅、見えるか?」

黒藤さんに問われて、沈みかけていた意識がはっとする。

黒藤さんが示した水鏡を、黒藤さんとは反対側から覗き込む。

そこには、ママと同じ顔の女性が――祭壇? のようなところに横たわっていた。この人が……

「紅緒様……」

ふと口をついたのはそんな呼び方だった。

今まで誰かを『様』扱いなんてしたことないし、そういう家風とは縁遠かったのに、この女性はそう呼ぶ対象な気がした。