権威と権力をぶっ飛ばして突き進む主様。

その先には惚れた女子(おなご)がただ一人。

……白の姫君のもとへ行く前に、天音殿の大鎌(おおがま)に貫かれて終わりな気しかしないがの。

天音殿もまた、白の姫君が初めての主だと聞く。

天女のような麗しい姿で、身の丈より長い大釜を振るう天音殿。

鬼神(きしん)と呼ばれなくなっても、唯一『姫』と呼ぶ人との約束のため、白の姫君を護るためにそれを捨てようとはしないと黒の若君が言っておった。

護りたいもの、というやつか……涙雨にはわからんな。

羽を仕舞い直して、涙雨もしばし眠ることにする。

意識の一端はいかなる時も覚醒しているので、真紅嬢が目覚めれば涙雨も起きる。

……今は、おやすみじゃ。