――今の声は、黒の式のものだった。 だから俺に向けられたものだが、波動で黒にもわかっているだろう。 「戻る」 言い置き、家に向けて歩き出した。 黒は現在、影小路の所有する庵(いおり)にいる。 月御門の本家は京都に構えているが、影小路は天龍(てんりょう)という山の中に本邸がある。 本家に次ぐ高位に『小路十二家』というほど、格の高い分家が十二もある流派なので、影小路所有の家は各地にある。 黒がいるのは、その中の一つだ。 「白――」 「うちに来たら」 顔だけで黒を振り返る。