「……いい加減『たいおん』って呼ばないと、また怒り散らすんじゃないか?」
「あいつの言い分を一方的に聞くのは嫌だ」
子どものようにそっぽを向いた。黒はまたため息をつく。
たいいん、たいおん――太陰。月の化身。
「海雨も死なせらんねえが、黎も死なせらんねえな」
黒は話を戻した。黙然と肯く。
「黎の方にはさっき、無月を遣(や)った。無月は黎に逢ったことがあるから、異常があれば知らせてくる。海雨の方は……」
黒が言いよどむと、俺は視線を黒藤に戻した。
「真紅が自分から言い出したんだが、浄化を真紅がやるのも手じゃないか?」
「……それは、出来るようになるまで時間がかかるだろう」



