黎明の吸血鬼は、立ち上がった。


私はびくりと身体を震わせ、布団で身体を護るように握り締めた。


「じゃあ――」


「でも、今じゃない」
 

黎明の吸血鬼は足を停めた。


「………」
 

長身のその瞳を睨み上げる。


銀――さっきは月を背負っていた、その瞳の色。


人間にこんな目の色はあっただろうか。


「今は死なせてやらない。俺は真紅の血がほしいから、死なせたくない」


「……何、勝手なこと……」


「そうだよ。勝手なことだ。俺の勝手な願望で、真紅を死なせたくないだけだ。真紅の血がほしいだけだ」


「な――」