黒藤さんが顔をしかめるの、初めて見た。 しかしママは気にしていないようだ。 「なんで?」 「無涯は消えました。それだけです」 「でも、紅緒はもうすぐ目覚めるわ」 「………」 ママが黒藤さんを黙らせた。その様に、桜城くんが一番驚いていた。 「若君を黙らせるって……」 もっと言うなら、桜城くんは愕然としている。 ママは何を思ってか、唐突に言った。 「黒ちゃん、一つ教えておくわね。紅緒は目が覚めても、当主に返り咲きはしないわ」