「兄貴なら鬼人の一族を立て直せると思うんだ。兄貴の鬼性(きしょう)は今、桜城の中で最も強い。……だから俺は、兄貴に家に戻ってほしい」
「……桜城くんは、自分が、とは思わないの?」
「俺は鬼人としての血が薄いみたいで、何も出来ないんだ」
……本当に、知らないんだ。
ふと、桜城くんに影が差した。
「……昨日は、ごめんね」
「へ?」
「若君――黒藤さんのこと。急にびっくりしたよね」
「うん……。さすがにびっくりしたけど、桜城くんが来てくれたから、本当のことなんだろうなって思いながら聞けた」
「兄貴が聞いたら妬きそうだね」
桜城くんは愉快そうに笑った。



