陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】


私は逃げようとしなかった。

逃げても、四方八方を囲まれていると気づいていた。

何も視えていないはずだ。

今までおばけや幽霊なんて見たことはなくて、黒藤さんも、私は見鬼の力ですら封じられていると言っていた。

たぶん、視えていたことに、あの夜と同じ夕陽を見て、気づいたのかもしれない。

けれど、黎と帰っているときは何も視えなかった。その理由はわからないけど……。

私の身のうちから、あふれるものがある。

今まで閉じ込められていたモノ。

無理に鍵をかけていたから、飛び出そうと暴れている。

身に添わない、大きすぎる力。

なにがきっかけ? それとも、リミットが迫っているから?

黎。

……逢えてももう、謝れもしないかもしれない。