『期日が迫って母上の術の効力が切れているか、真紅の内側から力があふれているか……俺には、後者のように思える。今はまだ母上の結界の膜があるから抑えられているけど、真紅から霊力の波動が視える。誕生日を迎える前にも、真紅には何らか、霊的な影響があるかもしれない』
そのときはまだ心のうちでは、そんなこと、と笑えた。
笑えなくなったのは、病院を出て夕陽を見た時だ。
一気に甦った来た、置いて来た記憶。
私を襲ったものを、私ははっきり見ていた。
いや、視ていた。
今だから理解出来るモノ。
闇色の――あれは翼? を背にして、刀を私に向けて来た、ヒトの形をしたなにか。



