「………」


「ん?」
 

私から外した靴を揃える吸血鬼が、顔を上げる。


「血が欲しいんなら、あげるよ」


「……急にどうした?」


「私なんかで役に立つなら、血でいいんなら、あげるよ」


「交換条件でも出しそうだな?」


「うん。私の最期を看取ってくれたら」


「………」


「私のね、両親は離婚してて、父親の顔は知らない。お母さんは恋人のところにいる。私は、この部屋で死ぬようなことがあったら誰も知られずに腐敗していくだけなの。だから、あなたが私の最期を看取ってくれるって言うなら、私の血は全部あげる」


「………」


「どうかな? やっぱり私も、こんな私でも、死ぬときくらいは誰かと手を繋いでいたいって思うよ」


「わかった」
 

吸血鬼の指が、私の首筋に触れる。


「真紅の血はもらう。最期のとき――俺が傍にいる」


「……うん」
 

また、牙が首筋に触れた。