気にさせないようにと、髪を直しながら努めて明るく聞こえるように言った。
「ほら、お仕事、こんなに抜けちゃって大丈夫なの? 他の職員の人も待ってるでしょ?」
黎の背中を押す素振りをすると、黎は「わかったから」と踵を返した。
「夜歩きするなよ」
「そっちこそ」
おやすみ、黎がそう言ったので、同じ言葉を返した。
月あかりは昇るのが遅くなっている。
黎の背中が見えなくなるまで見送って、鞄を抱きしめるようにして部屋まで駆けた。
扉を閉めて、そのままくずおれた。
……黒藤さんに言われた、私のもう一つの本性。