陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】


「俺が勝手にそうしたいだけだ。真紅から激突してきたから、どう逃げてもまたぶつかってきそうだ。なら、俺の目の届かないところで倒れられるのは困る」

「………」

駄目だ、これ以上は、泣いてしまう。

優しさを、突き放してしまう。

「……ありがと」

アパートの目の前で、私はやっとそれだけ言えた。

「戸締りしっかりしろよ?」

「うん」

「また困ったことあったら、いつでも彼氏役やってやるから」

「あはは。そんなことそう起きないよ」

「そうか?」

「そうだよ。ほんとにありがとう。黎も戻り、気を付けてね」

「ああ。………」

ふと黙ったかと思うと、黎の指が私の肩にかかった髪をはらった。