「俺が勝手にそうしたいだけだ。真紅から激突してきたから、どう逃げてもまたぶつかってきそうだ。なら、俺の目の届かないところで倒れられるのは困る」
「………」
駄目だ、これ以上は、泣いてしまう。
優しさを、突き放してしまう。
「……ありがと」
アパートの目の前で、私はやっとそれだけ言えた。
「戸締りしっかりしろよ?」
「うん」
「また困ったことあったら、いつでも彼氏役やってやるから」
「あはは。そんなことそう起きないよ」
「そうか?」
「そうだよ。ほんとにありがとう。黎も戻り、気を付けてね」
「ああ。………」
ふと黙ったかと思うと、黎の指が私の肩にかかった髪をはらった。



