「んなわけあるか。お前とは今日が初対面だ」 「だよね。……じゃあ、ほんとににおうの?」 「うん。すっげーいいにおい」 「……それは血のにおい?」 「真紅のにおいだよ」 「……どんなにおい?」 ここまでにおいの話をされると気になってしまう。一応、おなごだし。 黎が階段をあがっていく。 「月のにおい」 「……つき?」 「桜色の月のにおい、だな。春の、夜桜が舞ってる中ってーのかな。すきなにおい」 「………」 天性のタラシだ。 私は汗がダラダラだ。