青年を見て顔面蒼白といった様子の桜城くんに、黙るように、とでもいうように青年は口元に一本指を立てた。

それを受けて、桜城ははっと息を呑んだ。

「黒藤(くろと)」

「わか――黒藤さん。どうされたんですか」

「うん、ちょっとな。黎はもう行ったのか?」

「このまま病院に戻ると……黒藤さんは、一体……?」

「母上が目覚める前に真紅に挨拶しておこうと思ってな」

「! 紅緒(くれお)様が……?」

喉を引きつらせた桜城くん。

私はさっぱり意味がわからない。っていうか『様』ってなに。

青年はまた私の方を見た。

「はじめまして、影小路黒藤だ。真紅の母君の、紅亜様の双児の妹が俺の母にあたるから、従兄妹だな」

「………」

え。

「若君! 真紅ちゃんは影小路とは関係のないはずです。なんで今更……!」