「ねぇ、外の紅葉見える?」


金曜日の朝一番。


窓から見える校庭の木には、赤色や黄色の葉がそよそよと揺れている。


「見えるよ。すごい綺麗」


「おー。秋って感じだなぁ」


「ちょっ、と...近いっ/////」


カバンを置いた彼が急に隣に並んだその距離に、私は思わずそんなことを言ってしまう。


「何が?あ、紅葉が?」


「あんたがっ!いつも距離感が近いのよ!」


「近いかー?そんなの言われたことないけど」


「近いよ!周りに言われなかったことが不思議でしょうがない」


「自分ではそんなに近づいてる気しないけどなぁ.....あ、もしかしたらお前だからかも」


「はっ!?/////」


突然意味の分からないことを放った彼に、急激に胸が早鐘を打つ。


「お前相手だから無意識に近づいてんのかな」


「な、何言って...../////」


能天気に笑う彼は、私の心音の速さになんかどうせ気づいていない。


ねぇ、お願いだから、
勘違いするようなこと言わないでよ。


私は単純なやつだから、そんなこと言われたら柄にもなく期待しちゃうんだ。


「なんかお前、顔赤くね?」


「っ、赤くないし...../////」


「えー?すっげー赤いと思うけど。ほら、あの紅葉みたいに」


彼の指さす先には、沢山の黄色の中で綺麗に赤を色付ける紅葉が揺れている。


「あ、もしかして熱ある?」


「え──、っ!?」


瞬間。


私の方に伸びた彼の指先が、熱を確かめるように私の額に触れた。


「っ...!!/////」


「うわ、あっつ!これ保健室行った方がいいだろ」


「やっ、熱じゃないから大丈夫!/////」


「え?でも.....」


「大丈夫だからっ.../////」


「?変なやつー」


彼の手が離れた部分をそっと触れてみる。


これじゃあ、熱だと疑われても仕方がない。


そう思ってしまうほど、私の額は火照っていた。


「ねぇ、」


「...?」


「お前は赤と黄色、どっちが好き?」


「え?」


「紅葉」


「.....黄色、かな」


窓から見える景色を眺めながら答えれば、
彼は「ふーん」と興味なさそうに返してくる。


「何よ、自分から聞いたくせに」


「別に。ただ、俺は赤が好きだけどなーって思っただけ」


「なんで赤?黄色の方が綺麗じゃない?」


外に移した視線には、赤よりも黄色の方が目立って映っているように感じる。


「さっきのお前みたいに、だんだん色付く赤の方が俺は綺麗だと思うから」


「っ!?/////」


やられた。
なんて破壊力をもってんのさ。


落ち着いてきていた額が、また熱を持っていく。


「綺麗だなぁ」なんて言って外を眺める彼に、
それはどっちのことを言ってるの?なんて自意識過剰な考えが頭をよぎる。


彼は今日も、私の気持ちには気づかない。