「ねぇ、なんか部活入ってたっけ?」


火曜日の朝一番。


閉め切った窓の向こう側では、梅雨と呼ばれる雨が降り続けている。


「入ってないけど、なんで?」


彼の唐突な質問に答えながら、私は濡れてしまったバッグをポンポンと叩いていく。


「んー、なんとなく?」


「なんで聞いた方が疑問形なの.....ていうか、部活ならあんたも入ってなかったよね?」


「あー、うん。そだね」


「なんで入らないの?」


「最初は入ろうと思ってたよ、サッカー部。でもダラダラしてて気づいたら入部申請期間過ぎてた」


「...まぁ、あんたはそーゆーやつだよね。でも部活なら別に今からでも入れるでしょ。先生に紙もらって書けばいいだけなんだから」


「んー...ん。まぁ、そーなんだけど...」


「?...うわ、靴下も濡れてる.....あ〜もう、最悪」


口ごもった彼を不思議に思うも、雨に濡れてしまった靴下に気がいって面倒くさい気分になる。


ベトベトするし、替えの靴下に履き替えよう。


そう思って、立ち上がって片足を後ろに上げた時だった。


「部活入ったら、朝練があるじゃん。俺、お前とゆっくりできるこの時間なくしたくねーし」


「っ!!??/////」


油断した。


彼は時々、こっちの予想もつかないことを言ってくる。


私はバランスを崩して、隣に座る彼の方へと体を傾けた。


「あ、っぶな...へーきか?」


「へっ?あ、あぁ、うん、大丈夫.....、っ!?/////」


状況を理解するのに、少しの時間が必要だった。


彼はよろめいた私の肩を持って、支えてくれていた。


私も無意識に彼の肩に手を置いていたようで、お互いの距離が今までにないほど近くなる。


「あ、ありがと...../////」


「おー、いいってことよ」


「すぐにどくから.....、っ!」


耐えられなくて急いで距離を取ろうとすれば、肩を支えてくれていた彼の片手が私の頬を撫でた。


「ちょっ、と...なにしてんの/////」


バレていないだろうか。


初めてのことが多すぎて、赤く染まる顔を静めることができない。


「っ、」


もう一度、優しく触れたその手に、音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほど胸が高鳴る。


「...ふ、可愛い」


「はっ!?/////」


「お前、肌やわらけーな。てゆか、めっちゃ伸びね?」


「は?ちょっ、なにふるほっ!」


「ぶはっ!顔おもしろすぎ!」


「はなひぃてほ!」


さっきまでのちょっといい雰囲気はどこに行ったんだろう。


すっかりいつも通りになった空気に少し残念な気持ちを覚えながらも、彼らしいと笑ってしまう。


彼の笑顔、彼から出る言葉、彼の行動、彼の仕草。


その全てに、溢れ出てしまいそうなほど気持ちが募る。


あぁ私、重症だ。